本研究では、アルコール等の濫用薬物による臓器障害メカニズムを明らかにするため、細胞内の小器官である小胞体に着目し、アルコールによる小胞体ストレス応答の破綻と細胞内のミトコンドリアやゴルジ体と小胞体のネットワークの障害を明らかにすることを目的とする。平成22年度は、平成21年に異動があったため新しく環境を整える必要があり、ラットからの初代肝細胞培養を実施するための環境整備に時間を費やした。本研究費を用いて、CO_2インキュベーターや細胞を観察するための倒立顕微鏡、ラット灌流肝を実施するための小動物実験専用固定器や、コラゲナーゼや培地などの初代培養肝細胞を実施するのに必要なものの整備を実施した。今後、ラット初代培養肝細胞培養を実施し、小胞体やゴルジ体、ミトコンドリアにあるBAP31などのmRNAやタンパクの発現量や局在について、ウェスタンブロッティングや定量的PCRで検討するとともに、そのアルコールによる影響を検討する。また、細胞内情報伝達系であるJNKやAktの関与の有無について、JNKやAktのリン酸化抗体を用いてウェスタンブロッティングで検討する予定である。また、肝臓で生成されエネルギーに関連するクレアチンがアルコールにより受ける影響についての分析も行っていく予定である。不飽和脂肪酸を用いて細胞内に脂質を蓄積した脂肪肝モデルを作成し、小胞体やゴルジ体、ミトコンドリアにあるタンパクの局在変化について、アルコールの影響についても検討する予定である。
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