本研究では、アルコール等の濫用薬物による臓器障害メカニズムを明らかにするため、細胞内の小器官である小胞体に着目し、アルコールによる小胞体ストレス応答の破綻と細胞内のミトコンドリアやゴルジ体と小胞体のネットワークの障害を明らかにすることとともに、肝臓で生成されエネルギーに関連するクレアチンに着目してアルコールによる脂質蓄積と小胞体ストレス応答との関係をあきらかにすることを目的とした。平成23年度は、平成22年度に新しく整備した、CO_2インキュベーターや動物固定器などの初代培養肝細胞を実施するのに必要なものの調整を実施した。また、新しい設備のもとでラット初代培養肝細胞培養を実施し、培養条件の再検討を実施した。複数の濃度の血清培地を用いて培地の分析を行い、良好な実験条件の検討を行った。0~100mMのエタノールを24時間負荷し、細胞の状態をチェックした。培養細胞からは培地を-80度で保存し、さらに細胞の細胞質画分を分画し保存した。肝臓で生成されエネルギーに関連するクレアチンがアルコールにより受ける影響について培地を検討したところ、アルコール負荷によりクレアチンが非酵素的に転換されたクレアチニンの濃度はアルコール負荷で低下することを見出した。肝臓におけるクレアチン産生の機序は脂質代謝とも大きく関わっていることが知られている。脂質の蓄積による小胞体ストレス応答の変化に肝細胞におけるクレアチン産生障害が関わっているかもしれない。
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