研究概要 |
脳血管破裂によるクモ膜下出血は,短時間に致死性となる重篤な脳血管障害である.近年の脳血管インターベンションの普及に伴い,脳血管障害における医療行為の評価に際して1ミリ単位の血管病変の法医学的判断が求められている.本年度は脳嚢状動脈瘤について,破裂に至る形態学的特徴を連続組織標本を作製観察した.具体的には,脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血30剖検例につき100μm間隔の連続的観察を行った.その結果,破裂脳動脈瘤存在部位は,前大脳動脈-前交通動脈分岐部13例,中大脳動脈M2部7例,内頸動脈-後交通動脈分岐部4例,脳底動脈先端部4例,椎骨-後交通動脈分岐部2例であった.動脈瘤と母動脈の関係では70%が分岐部の血流方向に沿って瘤が存在していた.その他9例のうち4例が内頸動脈-後交通動脈分岐部動脈瘤であった.破裂の形態はブレブ先端型(63%),bursting pattern (27%)非ブレブ部位の瘤壁の破裂(10%)に大別された.93%に動脈瘤の成長に伴う瘤壁の線維性肥厚が見られ,肥厚層の数は1層(17例),2層(7例),3層(4例)であった.今回の結果から瘤の形態は症例により多様である事が解った,殆どの例に瘤壁の線維性肥厚を伴っていたことから,多くの例が瘤の安定化と再拡張を繰り返しながら成長している経過が病理学的に示された.肥厚層が多層である例は,成長経過が長い事例と考えられ,瘤のその他の形態学的特徴,臨床経過などとの対比により個々の動脈瘤の特徴を把握する必要がある.
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