研究概要 |
クモ膜下出血例で死亡直前に外傷が関与している場合、内外因の鑑別が重要である.本年度は、法医学実務上、しばしば問題となる単独性外傷性椎骨動脈破裂(外傷群)と、内因性動脈解離(病死群)によるクモ膜下出血の法医病理学的鑑別について、デジタルイメージングを応用した検索法の検討および解析を行った。 対象は外傷群3例、病死群3例。方法は椎骨動脈の0.2mm間隔の連続横断切片を作製し,全体像を顕微鏡デジタルカメラで撮影した。連続10標本については,画像解析ソフトImageJで内膜および外膜をトレースして内膜長/外膜長比を計測した。 結果、内膜長/外膜長比は外傷群で0.96±0.02,0.99±0.02,1.22±0.08.病死群で1.45±0.32,2.45±0.12,2.89±0.07.と病死群における破綻部位の外膜伸展が特徴的であった。それぞれの標本の組織形態学的特徴として、外傷群の2例で対側の椎骨動脈に内膜亀裂がみられた。病死群の組織所見ではいずれも非破裂部位に中膜平滑筋の変性および消失がみられた。また病死群に破裂部以外の場所の新旧の動脈解離を確認した。 今回の計測結果から、破綻部位の内膜外膜長比の計測が鑑別に有効と考えられた。また、内因例・外因性いずれも非破裂部位に鑑別の一助となる副所見が確認でき、破裂部位を含めた両側VAの組織形態学的観察の重要性が再認識された。
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