法医解剖症例の中から、心臓突然死が疑われる症例のうち、器質的変化を認めなかった8例について、血液からDNAを抽出し、遺伝性致死性不整脈の原因遺伝子の一つであるryanodine receptor 2(RYR2)遺伝子の変異を検索した。RYR2遺伝子の高多型領域とされる、エキソン8-15、44-47、49、83-105の計36エキソンについて、ダイレクトシークエンス法で変異の有無を探索したが、これらの領域に、アミノ酸置換を伴う変異は認められなかった。 また、病理学的検索の結果、不整脈源性右室心筋症(ARVC)で死亡したと考えられる3例について、血液からDNAを抽出し、Desmoplakin(DSP)の遺伝子の変異を検索した。DSP遺伝子の全てのエキソンについて、ダイレクトシークエンス法で変異の有無を探索したところ、1例において、エキソン12の494番目のアミノ酸TyrがPheへ置換したホモ接合体変異(Y494F)、エキソン23の1512番目のアミノ酸TyrがCysに置換したヘテロ接合体変異(Y1512C)、エキソン24の2869番目のアミノ酸IleがValに置換したヘテロ接合体変異(I2869V)が認められた。また、1例において、Y1512Cのヘテロ接合体変異が認められた。残る一例には、アミノ酸置換を伴う変異は認められなかった。Y494Fの日本人の健常人における頻度を調べたところ、変異alleleの出現頻度は16.6%であった。よって、Y494Fは日本人に多く認められるpolymorphismで、ARVCには関係ないのではないかと考えられた。その他の変異のARVCへの影響については現在考察中である。
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