研究課題
本年度は、昨年度に引き続き円皮鍼の刺激により嚥下反射の改善効果、誤嚥性肺炎予防効果、ADLや認知機能の改善効果を検討することを目的とした。宮城県仙台市近郊の長期療養型の病院に協力を依頼し、65歳以上の脳血管障害のある症例を対象とした。研究に同意して頂いた症例を無作為割り付けで以下のように3群に分けた。A群:嚥下反射を改善するツボ(経穴)に通常の円皮鍼を貼付する群B群:嚥下反射を改善する経穴にプラセボの円皮鍼を貼付する群C群:経穴ではない部位に通常の円皮鍼を貼付する群昨年度までの計画では4群に分けていたが、データを解析するにあたり統計上の理由から3群での比較に変更した。それぞれの群において経穴部位を消毒後に円皮鍼を貼付し、4週間連日貼り替えた。貼付前と4週後の嚥下反射を比較した。身長、体重、血液検査による栄養状態の評価、ADLや認知機能の評価、期間内の発熱日数、肺炎発症の有無等を円皮鍼貼付の前後に集め、変化の有無を検討した。震災後ということもあり高齢者は病状が不安定な方が多く、さらなる対象者数を確保するため協力施設を増やそうと努力したが、各施設とも研究に協力する余裕のない状態であった。よって比較的被害の少なかった研究協力病院で症例を集めた。これまでに収集したデータを検討してみると、A群は、B・C群に比較して嚥下反射の改善度が高い傾向にあった。つまり経穴に円皮鍼を貼付することで嚥下反射が改善し誤嚥性肺炎の予防となることが期待される。今後論文としてまとめて報告する。
3: やや遅れている
当研究に協力していた長期療養型の介護施設は宮城県の沿岸部にあり、東日本大震災の津波で壊滅的な被害をうけ研究を中断せざるを得なかった。今年度当初は内陸部に関連の介護施設があったため落ち着いた段階でそちらでの研究を継続できるかと予測されたが、スタッフの心理的ストレスの回復も遅れ、研究に協力する余裕がない状態であった。今年度の新たな計画として鍼刺激に対する頚部動脈の血流変化を高性能超音波診断装置で測定する計画であったが上記の理由から高齢者の症例を集めることが困難であった。
円皮鍼による刺激で嚥下反射が改善することを証明したのち、鍼刺激で嚥下反射が改善するメカニズムを解明するため、鍼刺激に対する頚部動脈の血流変化を高性能超音波診断装置で測定する。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
Evid Based Complement Alternat Med
巻: 2011 ページ: 157090,6
10.1155/2011/157090