研究課題
本研究の目的は、心身症の心理的背景である『ストレス脆弱性』と『身体化』の神経基盤を、脳機能イメージング技法を用いて解明することである。平成23年3月に発災した東日本大震災により、本研究の対象となる被験者群は仙台に在住しているために、震災ストレスの影響を受けていることが想定された。震災ストレスの影響は本研究計画の実験データにも交絡することが懸念されたたために、平成23年度のMRI実験を開始する前に、震災ストレスに関する予備調査を行った。その結果、一部被験者でPTSD症状が確認された。更に脳画像データと併せて、震災ストレスの脆弱性因子・獲得因子の神経基盤について検証した結果、震災ストレスの脆弱性因子として、前帯状皮質の灰白質量の減少が、獲得因子として左眼窩前頭皮質の灰白質量の減少が認められた。本研究成果はMolecular Psychiatry誌に発表し、平成24年3月にアメリカ心身医学会で、Young Scholar Awardを、同年6月に日本トラウマティック・ストレス学会で学会奨励賞を受賞した。当初計画にあった心身症に対するfMRI実験は、平成24年度までに、過敏性腸症候群(IBS)群30名、頭痛患者20名、摂食障害患者10名を対象として行った。対照群は、平成22年度に撮像した健常群30名のデータを利用した。心身症群では、精神的ストレスを抑制する時に賦活する脳部位(右背外側前頭前野)の活動が低下し、情動処理に関わる脳部位(扁桃体)の活動が上昇していることが確認された。更に、内臓知覚の処理に関連する脳部位(前島皮質)の活動が心身症群で低下していた。本研究結果から、『ストレス脆弱性』の神経基盤として、前帯状皮質および背外側前頭前野、『身体化』の神経基盤として前島皮質が有力な候補と考えられた。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件)
BMC neuroscinece
巻: 14 ページ: 29
doi:10.1186/1471-2202-14-29.
Molecular Psychiatry
巻: in press ページ: **
10.1038/mp.2012.51
Human Science & Technology
トラウマティック・ストレス