研究課題/領域番号 |
22790616
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
山本 武 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 助教 (70316181)
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キーワード | 葛根湯 / 樹状細胞 / 腸管粘膜免疫系 / 食物アレルギー |
研究概要 |
有効な治療薬が存在しない食物アレルギー性疾患に対する治療薬の開発を目指し、食物アレルギー性消化器症状を発症する病態モデルマウスを用いた治療薬の探索を行い、葛根湯が腸管粘膜免疫系で過剰亢進したTh2型免疫応答を抑制し症状を改善することを明らかにした。そこで、さらに葛根湯による治療機序の検討と有効成分の検討を行った。 葛根湯は7つの構成生薬(葛根、麻黄、桂皮、芍薬、甘草、大棗、生姜)から抽出された複合薬であり、多くの薬用成分を含んでいる。有効な生薬および薬用成分の検出のために、病態モデルマウスに対し生薬抽出エキスおよびその成分を用いた検討を行い、葛根抽出物やその成分であるプエラリンなどのイソフラボン類が有効であることを見出した。さらに、プエラリンの代謝物であるエクオールも有効であることを明らかにした。現在、これらの成分が、腸管粘膜免疫系を制御している樹状細胞の機能に対して与える効果を検討している。 また、食物アレルギーの治療に対する多面的な研究を行うために、経口免疫寛容の誘導による効果を検討した。その結果、母乳を介した食物抗原摂取により経口免疫寛容が誘導され、食物アレルギー性消化器症状が抑制されることを明らかにした。また、これまでに食物アレルギー発症に大きく関与する腸管粘膜型マスト細胞の脱顆粒を、芍薬成分であるペンタガロイルグルコースが細胞表面のFcεRI発現量を減少させることにより抑制することを明きからにしている。そこで、FcεRI発現量の制御機構について検討を行い、細胞膜からFcεRIのエンドサイトーシスを制御する因子である低分子量Gタンパク質Rab5がサブタイプによって異なった制御を行うことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究当初より、病態モデルを用いた検討と樹状細胞を用いた検討を行うことを立案していた。病態モデルを用いた検討により有効成分を明らかにしており、骨髄細胞由来樹状細胞の培養系および臓器から分取した樹状細胞による樹状細胞による抗原提示機構解析などの系を確立している。従って、今後病態モデルで有効性が示唆された成分を用い、当初の予定通り、樹状細胞系での詳細な機序解明を行う予定である。従って、計画は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
食物アレルギー性消化器疾患の病態モデルで有効性が示唆された葛根成分であるプエラリン、ダイジン、ダイゼイン、さらにその代謝物であるエクオールを用いて、樹状細胞の成熟化、抗原提示能などに対する影響を検討し、その機序を解明することによって、葛根湯による腸管粘膜免疫系制御の機序解明を行う。
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