本研究では、発癌と食事誘導性糖代謝異常との関連性を検討するために、対照食、高ショ糖食、高脂肪食を摂取させたマウスへ低容量紫外線B波(UVB)を長期照射する発癌実験を行った。 食事負荷5週目に行った経口糖負荷試験では高ショ糖食群の糖負荷後10分、20分の血糖値および、高ショ糖食群の糖負荷後20分、30分、60分、120分の血糖値は、対照食群と比較して有意に上昇していた。食事負荷6週目から、このマウスへ低用量から徐々にその強度を上げながら、UVB照射を行った。 UVB照射によって、皮膚の肥厚および皮膚の伸びの低下が観察されたが、この変化について食事間での差異は認められなかった。UVB照射18週目から観察された乳頭腫の数および、その径から概算した腫瘍の容積は、高脂肪食を摂取したマウスにおいて、対照食と比較して有意に増加していた。癌の増殖に伴い、すべての食事群でエネルギー摂取量の増大と体重低下が観察され、実験終了後に測定した血中の総コレステロールおよび遊離脂肪酸濃度はUVB照射群において、UVB非照射群と比較して有意に低下していた。また、血中のアディポネクチン濃度は、体重が低下していたにも関わらず、UVB照射によって有意に低下しており、UVB照射および発癌とアディポネクチン濃度との関連性が推測された。 本研究では、高脂肪食負荷マウスにおいてUVB照射による発癌および癌増殖の亢進が観察された。このように食事誘導性の糖代謝異常と発癌の関係を明確にする研究は予防医学の観点から意義があると考えられ、また近年紫外線の健康への影響が懸念されていることから紫外線による発癌についての検討は重要である。次年度では詳細にその機序を検討するために、採取した皮膚組織を用いて解析を行う。
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