本研究では、発癌と食事誘導性の糖代謝異常との関連性を検討するために、対照食、高ショ糖食および高脂肪食を摂取させたマウスへ低容量紫外線B波(UVB)を長期照射する発癌実験を行った。その結果、高脂肪食負荷マウスにおいてUVB照射による発癌および癌増殖の亢進が観察された。このように食事誘導性の糖代謝異常と発癌の関係を明確にする研究は予防医学の観点から意義があると考えられる。 高脂肪食による発癌への影響をさらに検討するために、照射期間終了後、皮膚組織の病理切片を作製して表皮層および真皮層の厚さを測定したところ、UVB非照射群のうち高脂肪食群において有意な肥厚が見られた。またUVB照射群では、高脂肪食群において上皮層が対照食群と比較して有意に増加していたが、真皮層の厚さは高脂肪食群において有意に低下していた。 また、ゼラチン基質の分解活性を指標として測定したマトリックスメタロプロテアーゼ9(MMP-9)の発現量は、UVB照射によって各食事群において有意に上昇していた。また、UVB照射高脂肪食群において対照食群と比較して有意な上昇が見られた。 しかし、腫瘍の増殖に関与すると考えられる皮膚組織中の血管内皮細胞増殖因子(VEGF)はUVB照射によって各食事群において有意に上昇していたが、食事群間での変化は認められなかった。 このように、高脂肪食はUVB照射による発癌および癌増殖を進行させること、またMMP-9が関与していることが示唆された。UVB照射によって皮膚組織中のVEGF量は上昇したが、高脂肪食での癌増殖亢進には関与しないと考えられた。
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