孤発性心房細動モデルとして、イヌ心房高頻度刺激モデルを用いた。電気的生理学検査において、2週間の心房高頻度刺激により、心房の有効不応期は有意に短縮し、また心房細動持続時間は有意に延長、心房細動の受攻性も有意に上昇し、本モデルが安定した孤発性心房細動モデルとして妥当であることが示された。 心房細動と自律神経のnerve sproutingの変化を検討するため、孤発性心房細動群および対照群において、各々抗neurofirament抗体を用いてイヌ心房の自律神経線維を免疫染色し、その結果を検討した。特に、その中でも交感神経線維に対しては、抗tyrosine hydroxylase抗体を用いて免疫染色を行った。孤発性心房細動モデルでは、対照群に比し、心房内の自律神経線維、特に交感神経線維が増加していることが示された。心房内の副交感神経線維の変化を検討するため、抗choline acetyltransferase(ChAT)抗体を用いての免疫染色を開始しているが、現時点では、孤発性心房細動モデル群と対照群で明らかな差を認めていない。 本研究では、イヌ孤発性心房細動モデルを用いて、心房細動に対する自律神経、特に交感神経のnerve sproutingが心房細動の発生・維持に重要である可能性を示した。今後、副交感神経のnerve sproutingをさらに検討し、心房細動と自律神経全体のnerve sproutingの変化を解明できれば、心房細動治療への新たなアプローチにつながると考えられる。また現在、同モデルにおいてβ遮断薬などの交感神経遮断薬の効果を検討しているが、その際のnerve sproutingの変化と心房細動の関係が明らかになれば、さらなる臨床応用が期待できる。
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