研究課題
本年度は、昨年までの検討で膵癌幹細胞機能の変化に伴い発現の変動が認められたマイクロRNA、miR-126につきその標的遺伝子の同定を行い、細胞機能との関連を検討した。1. データベース解析により、miR-126の標的遺伝子として既報にて膵癌組織での高発現が報告されているADAM9を同定した。miR-126 precursorを一過性に強制発現させたヒト膵癌細胞株、Panc-1およびASPC1においてはADAM9の発現レベルが低下することをウエスタンブロットにて確認した。以上より、膵癌幹細胞特異的に遺伝子導入を行う際に標的となりうる分子として、ADAM9が有用であると考えられた。2. miR-126がADAM9のmRNAと直接相互作用しうるかについて検討を行った。データベースにてADAM9 mRNA3'UTRに同定された候補配列につき、Promega社のpmirGLO vectorにサブクローニングしてレポーターベクターを作成。3'UTRアッセイを行った。同配列を挿入したレポーターベクターはmiR-126導入によめ活性が低下したが、変異配列を挿入したレポーターベクターではmiR-126導入により活性は影響を受けなかった。以上より、miR-126はADAM9を直接標的とすることが証明された。3. 癌幹細胞特異的に遺伝子導入を計画するに当たり、正常膵および膵癌組織におけるADAM9およびmiR-126の発現パターンをそれぞれ免疫組織化学染色とin situ hybridizationにて評価した。正常膵組織においては導管細胞、腺房細胞、ラ氏島においてmiR-126の良好な染色性を認めたが、ADAM9の発現は確認されなかった。対照的に膵癌組織においてはmiR-126の発現が消失しており、癌腺管に一致してADAM9の強発現が確認された。以上よりmiR-126とADAM9の発現は相互排他的であり、ADAM9を利用した遺伝子導入は正常膵組織に対して安全性が高い可能性が示唆された。前年度の検討でmiR-126の癌細胞に対する浸潤抑制効果が確認されており、ADAM9を標的としてmiR-126を癌細胞に導入することにより治療効果を増大させうるものと考えられた。
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