慢性膵炎に伴う膵性糖尿病では、膵切除標本の病理組織学的解析や膵内分泌負荷試験、実験動物モデルにおける解析などに基づいて、膵線維化と血管障害の進展に伴う膵島数の減少、インスリン分泌障害、ならびにインスリン抵抗性の関与などが報告されているが、その進展機序の詳細は明らかでない。近年、膵星細胞が膵の炎症と線維化に中心的役割を担っていることが解明されつつあるが、膵性糖尿病進展への関与については明らかでない。平成22年度は、ラット膵島細胞株RIN-5F細胞に対し、膵星細胞が与える影響について検討した。膵星細胞はWistar系雄性ラットより分離し培養により活性化したものを実験に用いた。1.0μm径の孔のあいたカルチャーインサートを用いて、ラット膵島細胞株RIN-5F細胞と活性化ラット膵星細胞を非接触下に共培養し、RIN-5F細胞の1.インスリンmRNA発現をreal time PCR法により、2.インスリン分泌をELISA法により、3.アポトーシスを細胞内ヒストン結合DNA断片化の定量により検討した。活性化膵星細胞との共培養により、RIN-5F細胞のインスリンmRNA発現は低下した。インスリン基礎分泌も低下したが、グリベンクラミドによる分泌刺激に対する反応性は保たれていた。また、活性化膵星細胞との共培養は、RIN-5F細胞のアポトーシスによる細胞死を誘導した。本検討により、ラット活性化膵星細胞はRIN-5F細胞のインスリン発現を抑制するとともにアポトーシスを誘導することが明らかになった。膵星細胞が膵島細胞に量的ならびに質的な変化をもたらすことにより、膵性糖尿病進展に関与していることが示唆された。
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