平成22年度は、膵星細胞がラット膵島細胞株RIN-5Fにアポトーシスを誘導することを明らかにした。平成23年度は、アポトーシス誘導メカニズムについて解析を行った。1)膵島細胞のアポトーシスにおけるinducible nitric oxide synthase(iNOS)発現が非膵性の糖尿病において報告されている。本実験系では、膵星細胞はRIN-5FにおけるiNOS発現を誘導しないことが確認され、膵星細胞による膵島細胞のアポトーシス誘導にはiNOS発現の関与は乏しいと考えられた。2)膵星細胞はNOSを発現しnitric oxide(NO)産生能を有していると考えられており、膵星細胞から産生されたNOが膵島細胞を傷害している可能性について検討した。共培養系における有意なNOの存在は確認されず、この系におけるNOの関与は乏しいと考えられた。3)蛍光免疫染色法により検討したところ、膵星細胞はRIN-5Fのcleaved caspase-9を増加させた。caspase-9の活性化が下流のカスパーゼカスケードを活性化し、膵島細胞にアポトーシスを誘導することが示唆された。4)膵島細胞のアポトーシス誘導における小胞体ストレスの関与についても検討を行った。蛍光免疫染色法により検討では、小胞体ストレス誘導時に上昇が報告されているCHOPは、この実験系では有意な上昇を確認しえなかった。リアルタイムPCR法により、小胞体ストレス関連分子の発現(BiP、Ero1L)を検討したが、有意な上昇を確認しえなかった。以上より、膵星細胞による膵島細胞のアポトーシス誘導にはcaspase-9を介するカスパーゼカスケードの関与が示唆された。本研究では膵線維化において中心的役割を担う膵星細胞が膵性糖尿病における膵島障害に関与している可能性が示され、膵性糖尿病予防に対する新たなアプローチが今後期待される。
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