研究課題/領域番号 |
22790631
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
堀口 昇男 群馬大学, 医学部, 助教 (10550022)
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キーワード | STAT3 / 細胞特異性 / NASH / 炎症細胞 / IL-10 / MCD食 / 高脂肪食 |
研究概要 |
"非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)におけるSTAT3の役割"を、肝細胞特異的STAT3ノックアウトマウスおよび、マクロファージ/好中球特異的STAT3ノックアウトマウスに、NASHの実験モデルであるメチオニンコリン欠乏食(MCD食)負荷を行い、またSTAT3活性に重要なサイトカインであるIL-10ノックアウトマウスにインスリン抵抗性を惹起するNASHモデルである高脂肪食負荷を行い検討を行った。 第一に、MCD食の負荷により肝細胞特異的STAT3ノックアウトマウスではMCD食開始後3日から2週間では、野生型マウスに比較して、肝臓における有意な脂質沈着と血清中の中性脂肪の上昇を認めたが4週間および8週間の投与では有意な差を認めなかった。このMCD食開始早期の、脂質沈着にはSREBPlcの発現亢進および活性化が関与していることが示唆された。一方で、炎症性サイトカインや炎症細胞の浸潤に差は認めず、肝細胞におけるSTAT3は脂質合成を抑制する役割を果たしていることが示唆された。 第二にマクロファージ/好中球特異的STAT3ノックアウトマウスにおいては、MCD食開始3日目より、野生型マウスに比較して著名な炎症性細胞浸潤をみとめる一方で、肝臓における脂質沈着は軽度であった。この現象は4週間、8週間投与の時点でも確認された。このメカニズムとして、炎症細胞はIL-6をはじめとするサイトカイン産生を介して、肝細胞におけるSTAT3を活性化することにより、抗脂質沈着に作用することが示唆された。 第三にIL-10ノックアウトマウスでは、6か月間の高脂肪食負荷により、有意な炎症細胞浸潤を認める一方で、脂質沈着を抑制することが示唆された。 これらの結果はSTAT3の細胞特異的な役割を明らかにし、また、炎症細胞浸潤が肝臓における脂質沈着を抑制するという新たな知見を示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複数の論文発表および、複数の学会発表を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
今回得られた知見の一部は、すでに論文としており、ノックアウトマウスから得られた知見を、ヒトNASH検体を.用いてさらなる解析を行っている。
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