研究課題
我々は当該研究において、マウス肝幹・前駆細胞を用いて分化・増殖の分子機構をin vitroで解析し、その結果に基づいて目的分子の発現を調節した肝幹・前駆細胞による細胞移植を行い、これらを基盤に疾患モデルマウス由来iPS細胞から分化誘導した肝前駆細胞を用いた肝疾患治療モデルを示す研究を行い、今年度の成果として下記を得た。(1)マウス肝幹・前駆細胞におけるWnt経路の機能に関する解析:Wnt経路の下流分子に関して、増殖能、成熟肝細胞・胆管細胞への分化誘導、細胞遊走能等について解析した。その結果、非古典的経路のリガンドであるWnt5aを添加した肝幹・前駆細胞は胆管細胞への分化誘導を遅延させることが示された。また肝幹・前駆細胞由来の細胞株を用いた検討でも、Wnt5aを添加すると擬似的胆管構造形成が抑制されることが示された(第62回米国肝臓病学会年次総会で発表、論文投稿中)。(2)ApoE欠損マウスをレシピエントとしたマウス肝幹・前駆細胞移植後の細胞動態の解析:ApoE欠損マウスに対して、野生型のマウス胎仔由来肝幹・前駆細胞を移植したところ、高脂血症が治癒し、移植した細胞がレシピエントの肝臓内で1年以上にわたって肝細胞として機能することを示した。さらに、成体マウス肝臓から分離した肝幹・前駆細胞についても検討し、移植細胞が長期間肝臓を再構築できることを示した(第62回米国肝臓病学会年次総会で発表)。(3)マウスiPS細胞を用いた肝前駆細胞誘導の実施と条件検討:マウスiPS細胞から肝前駆細胞誘導の条件検討を行い、現時点での至適条件を設定した(2011年肝臓学会総会で発表)。(4)ApoE欠損マウス由来iPS細胞を用いた肝前駆細胞移植による治療効果の検証:ApoE欠損マウスより樹立したiPS細胞を培養し、現在移植により治療効果を検討している。
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J Hepatol
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