C型慢性肝炎に対する現在もっとも有効な治療法であるテラプレビルを用いた3剤併用療法でも、PEGインターフェロン(IFN)・リバビリン(RBV)2剤療法で無効であった症例では著効(SVR)が得られる率は30-40%と予想されており、いまだ十分な治療効果とはいえない。このような状況の中で、IFN治療抵抗性に関わる分子の特定は、治療効果の事前予測に利用できる可能性があると同時に、現行の治療では治癒が期待できない難治症例に対する新規薬剤の開発につながる可能性がある。申請者らは、独自に開発した変異HCV培養細胞レプリコンシステムを用いて、HCV増殖制御に関連する宿主・ウイルス蛋白やIFNの抗ウイルス機構に抑制的に働く細胞内IFNシグナル関連蛋白とHCV蛋白の相互作用の解析を行い、これまでに以下の結果を得ている。1)臨床的に治療抵抗性であることが報告されているHCVコア70/91変異株を用いた培養細胞系の検討では、生体同様インターフェロン(IFN)低感受性であり、IL-6上昇、ウイルス粒子形成および分泌低下を認め、小胞体(ER)ストレス蛋白の発現誘導がみられた。2)JFH1細胞培養系を用いた検討でも、IFN低感受性株ではIL-6、SOCS(suppressor of cytokine signaling)3の発現亢進、IFN刺激因子(ISG)抑制がみられ、IL-6抗体処理によりIFN抵抗性が解除された。 培養細胞系を用いた以上の結果より、多機能サイトカインであるIL-6はERストレスと密接に関与し、治療抵抗性への関与が示唆された。
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