研究課題
本研究は、肥満や糖尿病に関連した様々な分子異常(インスリン抵抗性の出現、IGF/IGF-1受容体の過剰活性、adipocytokineの不均衡、内臓脂肪の増加に伴う慢性炎症状態の惹起、酸化ストレスの亢進等)が消化器発癌、特に肝および大腸発癌に及ぼす影響を明らかにすること、またこれらの分子異常を改善することで、肥満に関連した大腸および肝発癌が抑制できるか検討することで、臨床の場において有益な発癌予防法(薬)および診断法を開発することを目的とする。今年度の研究成果であるが、まず根治的治療を行ったStage Iの肝細胞癌患者を対象にした臨床試験において、早期治療後再発の予測因子として、術前のインスリン抵抗性が有用であることを明らかにした。基礎研究では、分岐鎖アミノ酸製剤がインスリン抵抗性の改善、IGF/IGF-1受容体シグナルの活性化抑制、血清レプチン値の低下、肝細胞の増殖活性抑制、肝臓の脂肪化および線維化の改善を介して、マウスの肥満関連肝腫瘍形成を有意に抑制することを明らかにした。またstatin製剤(pitavastatin)が、脂質異常の改善、血清アディポネクチンの上昇およびレプチンの低下、慢性炎症状態の抑制(大腸粘膜のTNF-α、IL-6、IL-18、COX-2の発現低下と血清TNF-α、IL-6、IL-18の低下)、および大腸粘膜におけるAMPK蛋白の活性化を介して、マウスの肥満関連大腸発癌を有意に抑制することを明らかにした。これらの研究結果は、分岐鎖アミノ酸製剤やstatinが、肥満・糖尿病に関連した分子異常を標的とすることで肝および大腸発癌予防を実践した可能性、すなわち栄養学的介入および薬剤投与によるこれらの分子異常の改善は、肥満関連肝および大腸発癌の有効な予防法となりうる可能性を示唆するものと考えられた。
すべて 2010
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