研究概要 |
目的:本研究は膵・大腸がんを含む各種がんにおいて異常発現していることが報告されているepidermal growth factor receptor(EGFR)に着目し、この脱感作を目指すことにより臨床上有効な薬物併用療法を確立することを目指している。 我々は今までにp38MAPKあるいはEGFRのセリン1046/1047のリン酸化を誘導するchemicalがEGFRの脱感作を起こす可能性があることを見出しており、まずこのセリンのリン酸化による脱感作のメカニズムを解明を行った。 この1年間の進捗状況と実績:短波長紫外線(UV-C)の膵がん細胞(Pancl,KP3)および正常膵上皮細胞(PE)に対するUV-Cの殺細胞および細胞増殖抑制効果、UV-CによるEGFRの脱感作(内在化および分解)への影響、EGFRの各種リン酸化、その下流の細胞内情報伝達機構への影響について検討した結果、Pancl,KP3ではUV-Cにより殺細胞効果とBrdUの取り込み低下を認めたが、PEではその効果はほとんど認めなかった。Pancl,KP3で高発現するEGFRはUV-Cによりその内在化が誘導された。またUV-CによりEGFRのセリン残基(Ser1046/1047)のリン酸化亢進およびEGFRの分解を認めた。さらにUV-Cはp38MAPKのリン酸化を惹起し、siRNA等でp38MAPKを阻害するとEGFRのセリン残基のリン酸化およびEGFRの内在化が抑制された。またUV-CによりEGFRの活性化及びubiquitin ligase(c-Cbl)とは独立した脱感作(分解)が見られた。つまり、UV-Cはp38 MAPKを賦活しEGFRのセリン残基をリン酸化した後、EGFRの脱感作を引き起こす、というEGFによる脱感作とは異なるメカニズムを見出した。またこの現象はHSP90阻害剤でも同様に見られ、EGCGと合わせEGFRのセリン残基のリン酸化による脱感作は普遍的なものである可能性が強まった。今後はさらにEGFRの局在に主眼をおいた研究を進めたいと考えている。
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