生命の設計図は遺伝子で構成されているが、環境的要因などの影響もあり、実際には多くのタンパク質や代謝産物がその生命活動を担っている。そのため、各種疾患におけるタンパク質代謝産物の変動は遺伝子の発現量よりも、ダイナミックである可能性がある。本提案課題では、アミノ酸や有機酸、糖、脂肪酸など低分子代謝産物を網羅的に測定が可能な、ガスクロマトグラフィー質量分析計解析システムを使い、大腸がんに対するメタボローム解析を実施する。これまでに、マウス、あるいはヒトの血清や尿、組織を用いたメタボローム解析システムを構築、データ分析も含めその解析システムを確立した。具体的には、健常者と大腸がん患者の血清から、クロロホルム/メタノール/水を用いた液液分配により、血清と尿からアミノ酸や有機酸など低分子代謝産物の抽出を行った。抽出液をガスクロマトグラフィー質量分析計に供し測定を実施し、得られた測定データを用いて多変量解析のひとつである主成分分析により統計処理を行うことで、大腸がん患者、健常人の血清中の低分子代謝産物の存在パターンがそれぞれ異なることを統計学的に明らかにしつつある。今後、計画どおり、早期大腸がん患者と進行大腸がん患者の手術後の血清も提供していただき(手術により完解が期待される検体を使用)、同様にガスクロマトグラフィー質量分析計による測定を実施して、手術後の血清、ならびに、尿中代謝産物存在パターンが健常人に近づくのか否かなどを検討することで、治療効果予測への適用性に関しても明らかにする。
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