研究課題
C型漫性肝炎に対する治療はペグインターフェロンやリバビリンの併用により改善したが、難治性のgenotype 1b,高ウイルス量の症例ではウイルスを完全に排除できるのは50%程度であり、治療によるうつ病や肺線維症など重篤な副作用があることが問題である。治療薬のインターフェロンはサイトカインのひとつであることから、治療効果の差異の要因として、ヒトゲノムの微妙な差異(SNP等)に由来する免疫反応の差、感染したウイルスゲノムの配列の差異に由来するインターフェロン抵抗性の差などが考えられる。本研究ではこれら宿主側、ウイルス側の両者を詳細に検討し、C型慢性肝炎の治療の改善を目指すとともに新規治療のシーズとなる遺伝子の探索を行うことを本研究の目的とする。平成22年度の実施計画としては、IL-28BのSNPをタイピングしたHCV患者のウイルスのアミノ酸配列と臨床背景について詳細なデータベースを構築し、HCVcoreアミノ酸の配列、ISDR(NS5A)の変異数、血小板、組織学的進行、トランスアミラーゼなど種種の臨床データを調べ相関を解析する。さらに、HCV core,ISDR,IRRDRの領域に種々の変異を有するクローン化ウイルスを作製し、IL-28BのSNPがmajor,minor allele homo各々のヒト肝臓を持つキメラマウスを作製して感染実験を行い、これらのマウスにインターフェロン-αを投与し治療効果を検討することとした。IL-28B genotypeとHCV患者のウイルス学的検討、臨床情報との相関を解析したところ、日本人に多いrs8099917のgenotype TTの症例でγGTPは有意に低いが組織学的に進行している症例が多く、HCV coreはwild typeが有意に多いことを見出し報告した。また、治療前の肝内インターフェロン誘導遺伝子(ISG)の発現はIL-28B genotype TTの症例の方が有意に低いことがわかった。このことはインターフェロン治療の著効例のほうが非著効例よりもISGの発現が低いというこれまでの報告と一致する。今後、なぜIL-28BのSNPによってISGの発現量に差が生じるのかを検討する予定である。
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