研究概要 |
我々が開発した「骨髄細胞から肝細胞への分化・増殖評価モデル(green fluorescent protein/carbon tetrachloride (GFP/CC14)モデル)」において、骨髄由来細胞が肝線維化の改善に寄与していることはすでに報告してきた(Sakaida I., et al.Hepatology 2004)が、その過程におけるマクロファージをはじめとした炎症細胞浸潤の関与については未だ明らかにされていない。今回我々は炎症細胞浸潤と肝線維化の関連性を明確にし、その過程に関わるサイトカインを解明する。GFP/CC14モデルの肝組織サンプルを用いてpan-macrophage markerであるF4/80に対する免疫染色・ウェスタンブロットを行った結果、骨髄細胞投与群において肝内マクロファージが有意に増加し、またそれらが門脈周囲から中心静脈方向へ移動することが明らかになった。次に肝内に浸潤したマクロファージ(F4/80陽性細胞)の起源を明確にするためにGFPとF4/80の蛍光二重染色を行った結果、その大部分はレシピエント由来であることが示された。続いて、monocyteやT cellの科学刺激物質であるSDF1さらにはそのレセプターであるCXCR4に対する免疫染色・ウェスタンブロット解析を行った結果、骨髄細胞投与によりそれらの発現が増強することが証明された。最後に抗SDFI抗体投与によりSDF1/CXCR4シグナリングをブロックした結果、肝内への炎症細胞浸潤(特にマクロファージ)が有意に抑制されることが明らかとなった。これらの結果を受けて、GFP/CC14モデルの肝組織および全骨髄細胞からF4/80陽性分画を分離・抽出し、それらの培養・移植により線維化改善効果を証明する予定である。
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