本研究は、ラットに四塩化炭素肝障害を誘導した結果として獲得された、チロシン代謝関連酵素の変動を、より網羅的に評価することを目的に開始された。すでに論文発表したように、ラット傷害肝中ではメラニン生合成に関与するD-ドーパクロムトートメラーゼが、非傷害肝に比べ、タンパク質レベルにおいて12倍多く存在することを明らかにしている。また、まだ未発表のデータではあるが、同じチロシン代謝関連酵素である可溶型カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(sCOMT)が、傷害肝中においてリン酸化型として多く存在し、脱リン酸化型が減少することを明らかにしている。そこで、このリン酸化が活性の強さ、あるいは基質特異性の変化をもたらすものと仮説を立て、肝傷害への影響を評価することを目指した。まず初めに、COMTの基質であるノルエピネフリンに対するCOMTの結合能に着目し、リン酸化によりどの程度結合能が変化するか、評価系の構築を試みた。N-ヒドロキシサクシニイミドの結合した樹脂にノルエピネフリンをカップリングさせ、その後肝抽出タンパク質溶液を、樹脂上のノルエピネフリンと反応させた後、リン酸化型(COMTと脱リン酸化型COMTのいずれが高い効率で検出されるか検討した。本システムでは非特異的なタンパク質の吸着が多く検出され、反応条件の更なる検討、新たな評価系の構築が必要となり、現在継続して研究を実施している。
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