研究課題
研究代表者は平成23年6月に、徳島大学医学部から徳島大学疾患酵素学研究センターへと所属が変更となり、本研究と平行して新たな所属先での仕事も進めてきた為、研究実施計画に完全に合致した形で進展させることが困難となった。本研究の成果の一部は、2012年4月1日発行のGene誌にて報告した。これは研究代表者の前所属先の教授が班員として参加している日本多施設共同コーホート研究とリンクさせた仕事である。本研究を進めるに当たり動物実験で明らかになった点として、肝傷害モデルラットの肝臓中で、チロシン代謝関連酵素であるカテコール-0-メチルトランスフェラーゼの変動がタンパク質レベルで観察されたことが挙げられる。本酵素を肝機能と関連がある候補タンパク質と位置づけ、熱不安定性となる遺伝子多型を有するヒト集団は、肝機能が標準的な遺伝子型を有する集団とは異なると考え、日本多施設共同コーホート研究のデータを使い、解析を試みた。日本多施設共同コーホート研究では現在、一般住民約4,500人の中から108の遺伝子多型と様々な表現型の関連についての解析を、各施設が分担して行っている。徳島大学が担当した解析の一部が上記のカテコール-0-メチルトランスフェラーゼと肝機能の関連についてである。統計学的手法を用いて男女別に、年齢、肥満度、地域別、ライフスタイル(飲酒・喫煙)、常用薬の有無、肝炎ウイルス感染の有無を調整することにより、COMTタンパク質が熱不安定性となる遺伝子多型を有するヒト集団では、肝機能が安定に保たれやすくなることを明らかにした。このことは、動物モデルを用いた網羅的解析によるアプローチが、ヒトの体質を解明していく上で良いシステムとして機能していることを示している。今後さらに詳細な解析を進めるため、代謝の中で関与するタンパク質の変動を網羅的に評価し、疾患と関わりの深い分子の探索に努めていく予定である。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件)
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