NASHの発症および病状進展におけるアンギオテンシンIIの作用機序として、終末糖化産物(AGE)が関わっていると考えられている。今回の検討から、肝脂肪化の初期段階から血中AGEは増加し、さらに、その受容体であるRAGEの肝臓での発現も肝脂肪化の初期段階から増加しており(未発表データー)、それらは、olmesartan投与により発現低下することで肝脂肪化の抑制と肝線維化の抑制に関わっていることが明らかとなった(未発表データー)。このため、Olmesartanによる肝細胞内シグナル抑制のメカニズムの解析を行う目的でRAGEノックアウトマウスを入手し、NASH肝におけるRAGE欠損の影響および、それによる細胞内シグナルの影響について検討中である。 肝星細胞やKupffer細胞など非肝細胞の機能異常によるNASH病状進展への影響が重要視されている。肝線維化進展において肝星細胞の活性化が重要で、Olmesartan投与によりその活性化が抑制されることをこれまでに報告してきた(Hepatology.2007;45(6):1375-81)。NASHの肝星細胞ではRAGE発現が高まっていることや、Olmesartan投与によりその高発現が抑制されることから、肝細胞のみならず肝星細胞における肝線維化進展においてもAGE・RAGEシグナル伝達を介した作用が重要で、その作用をOlmesartanが抑制することにより、肝の脂肪化、線維化の抑制が起こることが明らかとなった。また、Kupffer細胞の形態・機能異常はNASHの病態進展に重要な要因であることも明らかになっており、肝脂肪化が軽度の段階からKupffer細胞の形態・機能異常が始まっていることが明らかとなった(未発表データー)。さらに、Kupffer細胞の形態・機能異常に関わっている被貪食物の一つはAGEである可能性が高く(未発表データー)、現在その詳細なメカニズムの検討を行っている。
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