研究概要 |
現在まで臨床試験にて標準治療不応性固形腫瘍患者4例に免疫細胞療法を行った。細胞調製は全てGood Manufacturing Practiceレベルに準拠し、無菌検査、生存率、細胞表面マーカー(T細胞分画、樹状細胞の成熟化)による品質検査を行い、全て適合して患者に投与することができた。また有害事象評価ではGrade3(血液学的に関してGrade4)以上の重篤な有害事象は認めず全例安全に遂行することができ、本免疫療法の安全性が示唆されている。抗腫瘍効果はRECISTガイドラインに則り2例がSD(安定),2例がPD(進行)であった。免疫学的解析ではSD症例で末梢血中のナイーブ、セントラルメモリーCD8+T細胞分画の増加を認めた。誘導した細胞傷害性T細胞はCD107a mobilization assayにてHLA拘束性にRNF43陽性細胞株への傷害を認めた。また患者末梢血単核球も同様にRNF43陽性細胞株に対して本免疫療法前と比べ細胞傷害活性の上昇を認めた。前投与薬シクロホスファミド投与により末梢血中の制御性T細胞数が投与前と比べ減少を示す傾向を認め、制御性T細胞が排除されている可能性が示唆されている。今後も抗腫瘍効果を増強する免疫制御因子および抗腫瘍効果を阻害する免疫寛容因子の正負2因子のモニタリングを行い治療効果との関連性を見出していく。さらに免疫応答の評価として各症例Intracellular cytokine assayを行い患者末梢血単核球のRNF43ペプチド特異的IL-2,TNF-α,IFN-γを測定したが各症例で検出されるものが各々異なり、今後症例数を増やし検討する予定である。また既に臨床試験を終了された患者も定期的に経過観察を行い生存期間の追跡調査を行っている。有効例では免疫応答が示唆されており、バイオマーカーの検索等免疫療法のエビデンスや改善に寄与できると考えられる。
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