研究概要 |
DNAメチル化が、胃癌発症リスクの予測マーカーとして有用であるかを前向きに検証した。 早期胃癌の内視鏡治療を施行した129例を対象とし,プライマリーエンドポイントは異時性多発胃癌の発症とした。異時性多発胃癌の定義は「内視鏡的治癒切除後の経過観察期間中に、新規に診断した胃癌病変」とした。内視鏡治療前に試験参加の同意を得て胃前庭部・胃体部大彎の非癌胃粘膜から生検組織を採取した。新シドニーシステムによる病理評価とメチル化解析を行った。メチル化はパイロシークエンス法を用いてmiR-34b/c、SFRP1、SFRP2、SFRP5、DKK2、DKK3遺伝子を定量的に解析した。 経過観察期間中に17例 (13%)の異時性多発胃癌が発生した。胃体部粘膜のmiR-34b/cの高メチル化が、異時性胃癌発症と最も高い相関を示した。(ハザード比6.61, p=0.012) miR-34b/cのメチル化率が17.3%よりも高いHigh risk群では3年胃癌発症率は38.2%と高値を示し,17.3%以下のLow risk群では6.5%と低値であった。また胃体部miR-34b/cメチル化は単変量解析のみならず、年齢、性別、H. pylori感染を調整した多変量解析においても異時性胃癌発症リスクと有意に関連した。 これらの結果から胃体部非癌胃粘膜におけるmiR-34b/cのメチル化レベルは、内視鏡治療後の異時性多発胃癌を予測するマーカーとして有用であることを明らかにした。
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