切除不能膵癌に対する動注化学療法の弱点は、動注灌流域外となる後方浸潤部や転移リンパ節のコントロールに弱い点がある。今回の研究はこれらの部位への超音波内視鏡下局注療法にある。エタノールは局注療法として、HCCなどを中心に用いられてきたが、目的部位より拡散してしまう可能性がある、特に後方浸潤部などの間質部などに局注した場合は、拡散が強く効果が期待できない可能性がある。そのため、エタノール(あるいはフェノール)にグリセリンを混合し、粘度を上昇させる方法を考えた、まずは、実験に先立ち、実際エタノール(フェノール)にグリセリンを混合する濃度を変えて、藁液を作製した。エタノール:グリセリンを9:1、8:2、7:3、6:4、5:5、4:6、3:7で薬液を作製し、粘度試験機にて粘度を測定した。またフェノールは粉末剤であるたね、フェノール濃度はそのままで、グリセリン濃度だけを90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%で薬液を調整し、同様に粘度試験機にて粘度を測定した。さらに実際に局注する際に用いる、針(22G)に薬液を通して、注入可能かを検討した。エタノールは.80%以上でないと殺細胞効果が乏しいことが予想され、80%以上で有効な粘度が得られることを期待したが、有効な粘度は得られなかった。一方フェノールはグリセリン濃度が70%以下であれば、実際に注入が可能であり30%以上で適度な粘度がえられていた。 この結果をふまえ、まずは30%と60%グリセリン濃度での7%フェノール溶液を作製し、これを用いて膵癌患者での臨床試験を計画し、登録を開始した。まずは造影剤をまぜた薬液を注入し、術直後のCTでの集積部位を測定し、至適濃度を決定する。
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