研究概要 |
切除不能膵癌は近年、抗癌剤(Gemcitabine, TS1)により治療成績が改善してきているが、生存期間中央値(MST1)は5-10ヶ月と十分な成績ではない。我々は、切除不能膵癌に対し、膵周囲血行改変術と動注化学療法を行い良好な成績(MST22ヶ月)を報告してきた。しかし、膵周囲神経叢浸潤や転移リンパ節などの動注灌流域外の効果に乏しく、これらの領域のコントロールが課題である。これらの部位はアプローチが困難であることから治療の対象とはならなかったが、近年超音波内視鏡で認識が可能となりリアルタイムに安全に穿刺治療できることがわかってきた。現在疼痛緩和のため腹腔神経叢へのエタノール局注療法は行われているが、標的部位外に薬剤が拡散したり、アルコール不耐症では使用できないなどの問題点がある。そこで、従来より申言諸らが独自に行ってきた動注化学療法に加え、動注灌流域外となる部位を超音波内視鏡下にエタノールグリセリン局注療法を行うことで治療成績の改善を図る。エタノールにグリセリンを混合することで薬液が浸濁潤する部位を比較的限定できること、緩徐に薬液が浸潤することから治療効果がより発揮できる可能性がある。また本邦では欧米に比してアルコール不耐の患者が多く、そういった患者にはフェノールグリセリンを用いることで治療可能となる。すなわち、本研究では膵周囲血行改変術+動注化学療法に加え、癌浸潤神経叢/転移リンパ節に対し超音波内視鏡下エタノールグリセリン局注療法を行うことで、膵癌への局所治療と癖痛緩和治療を同時にあわせもった新たな集学的治療の開発を目論む。
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