HBVの3次元培養系の確立を目的として、平成22年度は肝炎ウイルス感染モデルおよび培養系の選定を行った。培養には不死化ヒト肝細胞および肝癌細胞株を用い、中空糸内に細胞を充填した"中空糸培養系"ならびにスフェロイドと呼ばれる組織様の細胞塊による"スフェロイド培養系"について比較検討した。各3次元培養系に患者血清を10^5 copies/wellとなるように添加することで感染を成立させ、その後培養上清中のHBs抗原、HBV DNA、細胞内HBV core関連抗原を測定し、HBV感染・複製を確認した。不死化ヒト肝細胞、肝癌細胞株ともに中空糸培養系では約1ヶ月間の培養が可能であった。また、特殊加工の培養プレートを用いることによりスフェロイドを形成、3次元化することができた。スフェロイド形成は2週間程度持続することを認めた。中空糸、スフェロイドによる培養はともに、培養上清中にHBs抗原やHBV DNA、細胞内HBV core関連抗原が検出された。中空糸培養系では抗原量の増加を認め、特に不死化ヒト肝細胞による培養では、上清中のHBs抗原とHBV DNA量が培養期間を通じて継続的に検出され、感染の持続を確認した。さらに、中空糸培養系では培養上清中にもHBV core関連抗原の検出を認めた。一方、スフェロイド培養系においてHBs抗原量は低値であり、培養日数に伴い検出量は減少した。今後、中空糸培養系による不死化ヒト肝細胞3次元培養系の実用化に向けた改良を重ねるとともに、この系を用いてHBV新規抗ウイルス薬のスクリーニングおよび個別化医療への応用に向けた検討を行いたい。
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