研究課題/領域番号 |
22790664
|
研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
村上 周子 名古屋市立大学, 大学院・医学研究科, 助教 (50454848)
|
キーワード | 肝炎 / ウイルス / 感染症 / 3次元培養 / 細胞・組織 |
研究概要 |
培養細胞は3次元化して培養し組織化させることでその性質が変化することが知られている。また、一般的な単層の細胞培養と比較して、3次元培養ではウイルスと細胞の親和性が高いことが知られている。以上の背景より本研究ではB型肝炎ウイルス(HBV)の3次元培養系確立を目的としている。 前年度の研究成果より、3次元培養系には中空糸内に細胞を充填した"中空糸培養系"を用いて検討した。不死化ヒト肝細胞であるHuS-E/2細胞において、HBV感染患者血清を感染源とし、培地に血清を添加する方法で感染を試みた結果、感染初期から経時的に培養上清中のHBV-DNAの増加を確認した。培養期間を通じた上清中のHBV-DNA量は10^4-10^5 copies/mlで検出され、30-60日間は培養の継続が可能であった。この長期培養継続下において、核酸アナログであるエンテカビルを添加したところ、高濃度(5μM)であってもHBV-DNA量に与える影響はほとんど認められなかった。研究代表者のグループでは既に、核酸アナログを含む環境下で3次元培養を開始しHBV感染実験を行った場合、HBV-DNA複製が抑制されることを確認している。このことから、細胞内への薬剤取り込みにおいて、長期間の培養により細胞に何らかの影響が及んでいると考えられる。今後、HBV培養系の実用化に向けて、長期培養での薬剤取り込みの改善に向けた検討を重ねる予定である。また、HBs抗原量は培養開始から2週間を経過すると低下を示しており、長期間安定してHBs抗原レベルを維持できるような培養環境の改良もあわせて行う。一方、1-2週間の培養期間においては、感染源別の比較などさらに検討を重ね、感染機序の解析や個別治療への応用を目指す。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3次元培養系を用いたHBVの長期培養は達成している。実用に向けて改良を重ねる必要はあるものの、例えば2週間以下の培養期間でも感染源の比較など次の検討が可能であり、並行して現在の方法でも研究を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究課題の目的は、新規のHBV長期培養系の開発であり、さらに1)HBV培養系を用いた新規薬剤の開発、個別化医療への応用、2)HBV感染機序の解析、の2点に大別できる。これまでメインテーマである3次元培養系を用いて進めてきたが、目的によっては3次元培養が必須ではないものある。したがって、今後は2次元培養など他の培養法も含め、目的に応じた培養系を採用し行うものとする。
|