研究概要 |
[目的]我々の共同研究グループはこれまでにEGFファミリーの一つであるHB-EGFやAmphiregulin(AR)がEGFRのリガンドとしての機能のみならず、細胞外ドメインが切断された後に残された細胞内ドメイン(HB-EGF-CTF)が細胞膜から核内へ移行し転写に関連した分子を制御していることを報告した。しかしながらそれらのEGFRリガンドの核移行が胃癌に対してどのような影響を来すかはわかっていないため、我々はHB-EGF-CTFとARの核移行の胃癌における意義について基礎的、臨床的に検討した。 [方法]胃癌細胞株にTet-offsystemを用いてARが選択的に発現可能な細胞株(MKN45/ARΔC)を樹立し、in vivoにおける抗がん剤効果の検討を行った。 ヒト胃癌細胞株を抗HB-EGF,AR抗体にて免疫染色行い、臨床病理学的評価を行った。 [結果]in vitroの実験結果と同様に、腫瘍移植動物モデルにおいても、核移行ARの発現によりcisplatin,paclitaxel,5-FUのすべての抗癌剤の感受性が有意に低下した。 胃癌の壁浸潤が高度な癌ほど、HB-EGF-CTFの有意な核発現をみとめた。ステージ4の切除不能進行胃癌において、ARの核発現をみとめた症例では抗がん剤耐性がみられ有意な予後不良因子であった。 [結論]HB-EGF-CTFの核移行は胃癌の浸潤を誘導し胃癌の進行に深く関わることが示唆された。 また、ARの核移行は抗癌剤感受性低下に関わり、予後不良となることが示唆された.
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