クローン病、潰瘍性大腸炎に代表される炎症性腸疾患は急増する原因不明の難治性自己免疫疾患であり、原因解明と疾患特異的な創薬は急務である。これまでに我々はクローン病の病態の中心に腸内細菌に対する腸管マクロファージの機能異常が存在することを証明し腸管NK細胞がクローン病において増加していることを報告した。 これらの知見および、昨年からの検討結果を踏まえ本研究では2年間で腸管NK細胞の詳細な解析、正常腸管における腸管免疫の恒常性の維持、炎症性腸疾患病態への関与を証明し、細胞間接触に関わる因子の探索、シグナル伝達経路の解明、更に炎症惹起性及び免疫恒常性に関わる各腸管NK細胞分画の移行性の検証を行い、病態解明、治療法の開発を目指し、研究を行う。平成22年度においては腸管NK細胞の免疫恒常性の維持及び炎症性腸疾患との関与の解明、腸管NK細胞と腸管マクロファージとの相互作用にかかわる新規因子の探索を目標として研究を行っている。 本年度の研究においては交付された研究資金をもとに、腸管照細胞にはNKp44とNKp46の細胞表面分子により大きく二つの集団に分類され、正常腸管においてはこれらの細胞集団が均衡により腸管免疫の恒常性が保たれていることを示す。一方、クローン病においてはこれらの著しい不均衡が生じていることを見出し、病態に関与している可能性を示す。また、腸管NK細胞の活性化には腸管マクロファージとの相互作用が重要であることを見出し、ここに関わる因子としてIL-23、TL1Aを検証する。 今回の研究における発見はクローン病の病態に腸管局所におけるNK細胞の関与があることを解明するとともに、難治性疾患であるクローン病に対し腸管NK細胞やIL-23、TL1Aを標的とした新たな治療方法の開発につながる研究である。本研究内容は平成22年度の国際学会も含めた複数の学会において報告し、Gastroenterologyへ投稿する。
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