研究概要 |
本研究は大腸癌細胞においてその細胞接着、columnar morphogenesis、浸潤、転移を担う分子機構を解明し、大腸癌治療戦略に応用することを目的とする。シグナル伝達過程にかかわる遺伝子群の中で、後天的治療抵抗性克服のために有効な標的分子を同定し、RNA Interference(RNAi)による抑制効果を検討し、新たな創薬への応用を目指す。 GFPをコードするMIGR expression vector(米国university of Pennsylvania大学John P.Lynch准教授より既に供与済み)を用いたCDX2強制発現大腸癌Colo205安定細胞株(M-X2)とMIGR1強制発現コントロール株(MIGR1)に対して、受容体型チロシンキナーゼ蛋白質EGF,IGF,c-METのmRNAレベル、蛋白発現レベルおよび遺伝子変異の解析を行った。総蛋白質の発現量に変化を認めなかったため、次にMIGR1およびM-X2におけるEGF、IGF、c-MET受容体遺伝子および細胞接着マーカーE-cadherin、β-catenin、p120catenin、DSC2、N-Cadherin、vimentinのリン酸化状態を解析した。CDX2の強制発現によりEGFは変化なく、IGFで上昇、c-METで低下、間葉系マーカーが低下し、細胞接着が増強した。細胞運動能、浸潤能の検討ではMIGR1に比し、M-X2細胞にて細胞運動能、浸潤能が低下した。さらにsmall GTPaseのRhoA,Rac1,CDC42の活性化の検討においてはRac1が減少した。CDX2強制発現大腸癌細胞株において活性化状態にある受容体型チロシンキナーゼの下流標的分子の探索しているが、現時点では非受容体型src,c-cb1,さらにはRac1に注目している。
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