研究概要 |
本研究は大腸癌細胞においてその細胞接着、columnarmorphogenesis、浸潤、転移を担う分子機構を解明し、大腸癌治療戦略に応用することを目的とする。シグナル伝達過程にかかわる遺伝子群の中で、後天的治療抵抗性克服のために有効な標的分子を同定し、RNAInterference(RNAi)による抑制効果を検討し、新たな創薬への応用を目指す。 CDX2強制発現大腸癌Colo205安定細胞株(M-X2)とMIGR1強制発現コントロール株(MIGR1)を用いて転写因子CDX2がcaveolin1のmRNA,蛋白発現を制御しPDGFR,c-Abl,CrkLシグナル伝達系を抑制的に制御することを示した。さらにこの伝達経路の下流シグナルをつきとめるべく、smallGTPaseのRhoA,Rac1,CDC42の活性化の検討においてはRac1が減少した。ヒトの大腸癌組織を用いた免疫染色の検討においてCDX2の高発現大腸癌ではRac1の発現は認められなかったが、癌先進部においてCDX2の発現を認めない癌細胞においてのみRac1発現を認めたことは特筆すべき現象である。一方CDX2発現のない低分化型大腸癌でRac1は高発現を認めた。Caveolin1,PDGFR,IGF1R,phophoPDGFR,phosphor IGFIR,c-Abl,CrkLの免疫染色を検討しているが、CDX2発現による差は少ないと考えている。現在CDX2によるRac1発現の制御のメカニズムを追及するために、内因性CDX2を高発現するCaCO2大腸癌細胞株、T84大腸癌細胞株およびsiRNA,ShRNAを用いてCDX2をノックダウンし、mRNAおよび蛋白発現レベル、細胞接着能、細胞浸潤能、細胞増殖能を検討している。今後はマウス実験を検討している。
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