研究課題
【目的】肝臓星細胞はビタミンA貯蔵細胞であるとともに、病的肝臓においてはmyofibroblast化してコラーゲンを産生し、肝臓の線維化を促進する。本研究の目的は、線維化の機構解析や抗線維化薬の開発に用いるための、バイオ人工肝臓での肝臓線維化モデルを開発することである。【方法】マウス不死化星細胞A7細胞、不死化肝細胞IMH-4、不死化類洞内皮細胞M1をラジアルフロー型バイオリアクターで培養し、バイオ人工肝蔵モデルを作製した。静止期星細胞のマーカーはビタミンA貯蔵酵素lecithin:retinol acyltransferase(LRAT)とcellular retinol binding protein 1(CRBP1)の共発現、線維化活性はTGF-β活性化の指標であるlatency associated proteinの断片(LAP-D)の培養液での濃度変化で評価した。【結果】プラスチックディッシュでの単層培養下では、星細胞A7は活性化しており、LRATとCRBP1のmRNAの発現はほとんど認めなかった。肝細胞IMH4ではLRATmRNAのみ、内皮細胞M1ではCRBPmRNAのみが発現していた。A7,M1,IMH4の3細胞を小型ラジアルフロー型バイオリアクター(RFB)で、2%FBS添加ASF-104培養液を還流し、共培養すると、約2週間の培養後、LRATmRNAは低下し、CRBP-1のみ発現を認めた。この時点で肝臓線維化活性を示す培養液中のTGF-βLAP-Dは単層培養ヒト肝臓myofibroblastの培養上清と同程度(150-200pM)検出された。3種の細胞を共培養したのみのバイオ人工肝臓では、線維化活性が強いと考えられた。そこで、線維化活性を抑制することが期待される薬剤Aを加えて、3種の細胞を共培養したバイオ人工肝蔵に投与したところ、LRATmRNAが検出されるようになり、その免疫染色でも内皮細胞と星細胞と思われる非実質細胞にLRAT陽性細胞を認めた。しかし、薬剤AではLAP濃度の低下は認めず、TGF-β活性化は抑制されなかった。【結論】マウス不死化星細胞、内皮細胞、肝細胞をRFBで共培養したバイオ人工肝臓は、通常の2%FBS添加ASF-104N培養液の培養では肝線維化活性を示した。線維化抑制薬剤を添加すると、星細胞にはビタミンA貯留能を反映するLRATの再発現やLAP-D濃度変化から、抗線維化薬の効果判定にも利用できると考えられる。実際のコラーゲン線維は2週間の培養では形態的に認めておらず、typeIV collagenの産生の観察など、さらに検討が必要である。
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