1)ヘリコバクターフェリス菌を生後8週のC57BL/6マウスに経口投与。3ヶ月後に屠殺、胃炎モデルの完成を確認した。2)胃切片を抗Ki67抗体とリンカー部スレオニンリン酸化Smad2/3蛋白に対する抗体(以下抗pSmad2/3L-Thr抗体)を用いて、蛍光二重免疫染色し、Ki-67陰性かつpSmad2/3L-Thr陽性の細胞を検出した。 3)上皮細胞のマーカーであるサイトケラチン8とpSmad2/3L-Thrの蛍光二重免疫染色法にて、この細胞が間質の細胞や浸潤した炎症細胞とは異なることことを確認した。 4)これまで提唱されている消化管上皮幹細胞マーカーDCAMKL-1とpSmad2/3L-Thrの蛍光二重免疫染色法を行い、両者の陽性細胞は一部重なるか、もしくはすぐ隣の非常に近接した、分化状態が近い細胞として認識された。 5)蛍光免疫染色後の切片をそのままHE染色することにより明視野にてpSmad2/3L-Thr陽性細胞を確認した。この細胞は未熟な細胞の可能性が示唆され、胃底腺、幽門腺において幹細胞が存在するとされる胃腺峡部に確認された。 6)ヘリコバクター感染/非感染マウスの胃粘膜において2)-5)をそれぞれ検索した。胃炎モデルマウスにおいて、粘膜の過形成とともにpSmad2/3L-Thr陽性細胞数、Ki67陽性細胞数、DCAMKL-1陽性細胞数が増加していた。pSmad2/3L-Thr陽性細胞は峡部のみで増加していたが、DCAMKL-1陽性細胞は胃粘膜全体に広がっていた。 7)小腸・大腸においても抗Ki67抗体と抗pSmad2/3L-Thr抗体の蛍光二重免疫染色を施行、小腸はパネート細胞直上に、大腸は腺管底部にpSmad2/3L-Thr陽性細胞が認められた。両者はこれまで幹細胞の存在が考えられた部位と合致した。以上よりpSmad2/3L-Thrは胃上皮幹細胞マーカーと考えられた。
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