研究概要 |
本研究は腸管組織線維化調節のセンサー蛋白質と考えられる筋線維芽細胞TRPチャネルを標的として、筋線維芽細胞の増殖、遊走、炎症性サイトカイン産生、extracellular matrix制御機構の解明とともに、腸狭窄の内科的治療法を探ることを目的とする。 ヒト筋線維芽細胞株CCD18Co細胞にはTRPC1,C3,C4,C5,C6 ; TRPV2,V3,V4,V5,V6 ; TRPM1,M3,M4,M6,M7のmRNAの発現が確認された。筋線維芽細胞において前述の線維化に関わる分子の多くはCa^<2+>により発現が制御される。本年度の研究成果として、炎症メディエーターTNFαで培養ヒト筋線維芽細胞CCD18Coを刺激した時に、TRPC1の蛋白発現およびTRPC1をするCa^<2+>流入が増加し、Ca^<2+>依存性転写因子NF-κBの核移行を抑え、COX-2の発現を抑えることによりその下流にあるPGE2産生を有意に抑制する働きがあることが明らかとなった。この研究成果をまとめた論文は、学術誌AMERICAN JOURNAL OF PHYSIOLOGY-GASTROINTESTINAL AND LIVER PHYSIOLOGYに掲載が認められた。 COX-2やPGE2の生体内における様々な生理作用を考えると、腸管筋線維芽細胞TRPC1チャネルは線維化のみならず、炎症や発癌にも大きく関わる因子であることが示唆された。この実験結果は、筋線維芽細胞がもたらす腸管炎症の増悪や治癒の両方向におけるシグナル伝達経路の解明に繋がり、炎症性腸疾患IBD時の線維化治療に用いる新しい薬物のスクリーニングを行うにあたって重要な手掛りとなる。
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