本研究の目的は切除不能進行膵癌患者を対象として治療前の超音波内視鏡下生検によって採取した膵癌組織を用いてゲノム構造異常などの網羅的分子情報解析を行い、抗癌剤感受性や予後など臨床的因子に関わる分子情報を解明し、個別化治療の構築を目指すことにある。 平成25年3月までに172例の切除不能進行膵癌患者より超音波内視鏡下生検による膵癌組織の凍結保存を行った。これまで、本年度42例を含む117例の生検検体よりDNA抽出を行っており、平均2.24μgのDNA抽出が可能であった。なお、KRAS変異解析(Direct Sequence法または一塩基伸長法)を行った75例中61例(81.3%)に遺伝子変異を認めた。また、これまでのアレイCGH解析では膵癌における代表的な癌抑制遺伝子であるp16およびSMAD4のlossを各々約60%および50%の症例に認めた。これらは上記KRAS変異解析と同様に、切除標本を用いた過去の報告と比較し再現性のある結果であり、微小な生検検体であっても癌組織の分子情報評価が可能であると判断された。 全117例の治療法はゲムシタビン療法50例、ゲムシタビン+S-1併用療法31例、ゲムシタビン+エルロチニブ療法13例、S-1療法3例、S-1併用放射線療法18例、重粒子線治療2例である。現在治療の有効性データ(化学療法の抗腫瘍効果、生存期間など)を集積中であり、オリゴチップゲノムアレイ(アジレント・テクノロジー Human Genome CGHマイクロアレイ 4×44kまたは8×60k)を用いて解析した膵癌ゲノムコピー数異常のプロファイルとの関連性を検討する。
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