特発性もしくは膠原病に合併する肺動脈性肺高血圧症患者群、肺高血圧を合併しない膠原病患者群、健常ボランティア群の各々8例、12例、12例を登録した。特発性もしくは膠原病に合併する肺動脈性肺高血圧症患者は全例で右心カテーテル検査を行い、肺動脈圧、肺血管抵抗を測定した。登録した患者から末梢血を採取し、血漿を遠心分離し凍結保存した。 保存した血漿を用いて、フローサイトメトリーでPECAM-1、β1-integlin、ICAM-1、PDGFRα、PDGFRβ、KDR陽性の血漿マイクロパーティクル数を定量した。現在のところ有意な結果マーカーとなるものは認められていない。 肺動脈血管内皮細胞で発現している接触阻害に関与する膜タンパクの発現低下が、新生内膜の形成に関与していると仮説をたてた。培地に肺高血圧症の危険因子と考えられる薬剤(セロトニンなど)を複数組み合わせて投与した後、培養血管内皮細胞層を固定した。同細胞層の上に重層して血管内皮細胞を播種したところ、特定の因子の組み合わせでは重層化が促進された。このことは膜タンパクよる接触阻害が抑制されたことを示唆していると考えられた。この際に低下している接触阻害関連膜タンパクを検索する予定である。 ベルギーにおける肺高血圧治療の中心的施設(ブリュッセル自由大学)に留学を開始した。同施設において、肺高血圧症患者の肺組織のmRNAマイクロアレイを行った。現在結果を解析中である。 細胞培養系とマイクロアレイの結果で、検討すべき新たなマーカー分子の候補を選定する予定である。検体はすでに保存されているため、選定後速やかにフローサイトメトリーでの評価を行える。これらの結果から同疾患のバイオマーカーとして有用な血漿マイクロパーティクルが見つかれば、肺高血圧の早期発見および発症機序の解明に有用であると考えられる。
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