研究課題
我が国では突然死の頻度は年間5万人前後と推定され、その約30%は特発性不整脈症候群が原因であり、大部分を特発性心室細動が占めている。本研究は、特発性心室細動の臨床像並びに遺伝的背景と不整脈発生の機序の解明と遺伝子型を考慮した新たな個別化治療(Tailor made therapy)の開発を目的とした。特発性心室細動は多様な病態からなる疾患群でブルガダ症候群やQT短縮症候群といった特徴的な心電図所見を呈するものを含む。従来より我々は正常亜型の心電図所見と考えられている早期再分極の特発性心室細動への関与を報告してきているが、国内の主要な不整脈診療施設の協力を得て本研究を施行した。多施設から集積した早期再分極関連の特発性心室細動の症例数は、従来の研究と比較しても最大規模に近い症例50例以上となった。この患者群においてまず臨床像を健常者と比較検討し、本疾患において心電図上のPQ間隔やQRS間隔が延長していることから、心臓の電気的活動の伝導が遅延していることを明らかとした。また、本研究では早期再分極関連特発性心室細動の疾患の新たな原因遺伝子の検索を行い、心臓ナトリウムチャネル遺伝子SCN5Aの変異を初めて同定した。変異ナトリウムチャネルの機能解析を変異遺伝子を培養細胞に発現させて行ったところ、我々が同定したすべての変異チャネルは全くナトリウム電流を流さない無機能チャネルであることが明らかになった。本研究によって、ナトリウム電流の低下が早期再分極関連特発性心室細動のメカニズムの一つであることが解明された。またこれらの臨床像や遺伝子解析の結果を症例に還元すべく、心室細動再発のリスクファクターを検索した。多変量解析により、若年発症、突然死の家族歴ならびに短期間に不整脈発作を繰り返すエレクトリカルストームの既往が心室細動再発のリスクファクターであることが明らかとなった。本研究によって特発性心室細動の新たな臨床的特徴、原因遺伝子ならびに不整脈発作のリスクファクターが解明され、これらの知見は難治性不整脈の診療において有用である。
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