・研究の内容内皮障害を伴う血管病変形成は、血管病の発症の原因であると考えられている。血管病の克服には、内皮機能や血管構造を修復、再生すると共に障害から内皮を保護することが必要である。我々はギャップ結合(GJ)の異常が血管病の発症を促進することに着目し、本研究では、(1)内皮保護作用を有する活性化プロテインC(APC)とトロンボモジュリン(TM)が内皮細胞間GJに及ぼす影響と、(2)GJを介した内皮細胞と白血球の相互作用が炎症反応に及ぼす影響を解析したので、これまでの研究成果に基づき報告を提出する。 ・研究の成果と意義(1)培養内皮細胞にAPC、TMを作用させることで、GJの機能(隣接した細胞内の物質移送)が亢進した。この結果はGJを介した相互作用の増強が、APC、TMの細胞保護作用の発現に重要な役割を有すことを示唆した。また、(2)炎症刺激で活性化した内皮細胞と好中球の共培養によって内皮細胞からの単球走化活性因子(MCP-1)、インターロイキン(IL)-6の分泌が誘導され、内皮細胞と白血球との共培養によって白血球からMCP-1、IL-6の分泌が誘導されることを明らかにした。これらの結果は、障害部位の内皮細胞と好中球、白血球のGJを介した相互作用が各細胞機能を制御している可能性を示唆した。 ・研究の重要性 GJの機能障害が動脈硬化症や高血圧症の発症に関与することが報告されているが、GJの異常による血管病変形成の分子機構は明らかでない。本研究は、血管内皮の機能維持にGJを介した内皮細胞間相互作用が重要であることを示し、また、障害血管部位における炎症反応の制御に内皮細胞と好中球、白血球の細胞間相互作用が重要であることを示した。
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