研究課題
マイクロRNA(miRNA)は塩基配列相補性を示すメッセンジャーRNAの3'非翻訳領域を標的とし、翻訳抑制あるいは分解を介してその発現を抑制し、様々な疾患形成に関わる事が明らかになってきた。miRNAの心血管疾患形成における役割を解明し、その機能を制御することによる新規治療法の開発へと結びつけることを目的として研究を開始した。我々は、細胞内コレステロールの制御において最も重要な転写因子のひとつであるsterol regulatory element-binding proein2 (SREBP2)のイントロンに存在するmiR-33に注目した。miR-33はSREBP2と共に発現し、high density lipoprotein (HDL)形成に不可欠なコレステロール輸送蛋白であるATP-binding cassette transporter A1 (ABCA1)の発現を負に制御し、HDL形成を抑制することが明らかになった。miR-33欠損マウスを作成したところこのマウスにおいては血中のHDLの上昇を認めた。今後、動脈硬化モデルマウスであるapoE欠損マウスを用いて動脈硬化におけるmiR-33の機能につき詳細な検討を行う。一方、心不全に関わるmiRNAとしてmiR-146aを同定した。心筋細胞において、miR-146aはドキソルビシンの刺激により上昇し、アポトーシスを誘導する事が明らかになった。さらにそのメカニズムが、心筋保護因子であるニューレギュリン-ErbB4経路をmiR-146aが抑制することにあることをつきとめた。今後、マウスにおいて、ドキソルビシンによる心不全の形成におけるmiR-146aの役割を解明し、新規治療法の開発へとつなげる。
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