生後9週齢のApoE KOマウス、ApoE/AT_1且KOマウスの総頸動脈分岐部直下を結紮し、4週間後に結紮した総頸動脈の近位部に内径0.58mm、長さ2mmのポリエチレンカフを留置することで、動脈硬化性プラーク破綻モデルを作成した。また、それぞれのマウス腹腔常在マクロファージを採取・培養した。作成したプラーク破綻モデルの病変組織およびLPS刺激(1μg/ml、6時間)を行ったマウス常在腹腔マクロファージよりmRNAを抽出し、動脈硬化関連遺伝子の発現をreal-time PCRで検討した結果、ApoE KOマウスではLOX-1、スカベンジャー受容体、炎症性サイトカイン、オステオポンチンのmRNA発現が亢進していたのに対し、ApoE/AT_1KOマウスではこれらのmRNA発現が抑制されていた。また、酸化LDL刺激(50μg/ml)を行ったマウス常在腹腔マクロファージにおけるスカベンジャー受容体CD36の発現とそのシグナル伝達系の下流にあるJNK-2のリン酸化をWestern blotで検討したところ、ApoE/AT_1 KOマクロファージではApoEKOマクロファージに比し、CD36の蛋白発現とJNK-2のリン酸化が有意に抑制されていた。これらの結果より、AT_1受容体遮断がプラークの脆弱化に関わる炎症性サイトカインの産生抑制、マクロファージの集籏や泡沫化に関わるスカベンジャー受容体の発現やJNK-2の活性化を抑制することで動脈硬化性プラークを安定化させる可能性が示唆された。平成23年度は、マクロファージのM1/M2極性化やマクロファージの遊走、貪食能におけるAT_1受容体の役割を明らかにすることで、動脈硬化性プラーク脆弱化との関わりを究明していく予定である。
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