IgGオプソニン化した赤血球の貪食能を検討した結果、ApoE KOマウスに比しApoE/AT_<1a> KOで赤血球の貪食能が有意に低下していた。酸化LDL刺激によってマクロファージの遊走能が低下し、動脈硬化組織内にマクロファージがtrappingされることで持続炎症や組織破壊が惹起され、動脈硬化の進展やプラークの脆弱化を来すことが推測されている。本研究では、酸化LDLによるマクロファージの遊走能に及ぼすAT_<1a>受容体の役割についても検討した。MCP-1刺激による遊走能はApoE KO、ApoE/AT_<1a>KOマクロファージで差を認めなかったが、酸化LDL刺激によってApoE KOマクロファージの遊走能は著しく低下したのに対し、ApoE/AT_<1a> KOマクロファージでは酸化LDL刺激による遊走能の低下が回避されていた。酸化LDL刺激によってマクロファージの遊走能が低下するメカニズムとして、酸化LDLがスカベンジャー受容体であるCD36を刺激することでFAK (focal adhesion kinase)の活性化を引き起こすことが報告されている。そこで、CD36の蛋白発現およびFAKのリン酸化を検討したところ、ApoE/AT_<1a> KOマクロファージではApoE KOマクロファージに比し酸化LDL刺激によるCD36の蛋白発現が減弱しており、FAKのリン酸化も抑制されていることが判明した。以上の結果より、AT_<1a>受容体刺激はマクロファージの極性を炎症性(M1)に誘導させ、持続的な炎症をもたらすことで動脈硬化性プラークの脆弱化にはたらくことが示唆された。また、AT_<1a>受容体刺激はマクロファージの貪食能を活性化し、容易に泡沫化を起こしうる可能性が示唆された。さらに、AT_<1a>受容体刺激はスカベンジャー受容体であるCD36の発現を亢進させ、FAKの活性化を介してマクロファージの遊走能を減弱し、動脈硬化巣内に留まらせることによって更なる持続炎症・組織破壊をもたらし、動脈硬化性プラークの脆弱化に寄与している可能性が示唆された。
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