遺伝性不整脈の原因として、イオンチャネル本体であるαサブユニットだけでなく、その補助タンパクの異常も不整脈の原因となりうる可能性が示唆されてきている。これまでいくつもの遺伝性不整脈の原因遺伝子が同定されたが、すべての原因が明らかになったわけではない。本研究では心筋ナトリウムチャネルのβサブユニットに着目するが、それがβアミロイド生成にかかわる酵素、セクレターゼ(BACE)により切断されることが報告されており、その切断が心筋でのナトリウムチャネルの機能に深く関わっているのではないかと考え、イオンチャネル調節機構の一端を解き明かすことを目標とした。まず本年度は心筋ナトリウムβサブユニットがセクレターゼにより切断されるかを検討した。 当初、培養細胞系での実施を検討しており、心筋に存在するとされているBACE2をHEK細胞にトランスフェクションして、ステイブルセルラインを作成し使用する予定であった。しかしステイブルセルラインの作成が順調にいかなかったため、代替案として提示していた新生児ラットの単離心筋細胞を用いることにした。単離心筋細胞に心筋ナトリウムチャネルのタグ付きβサブユニットをトランスフェクションして、タグを抗原としたウエスタンブロットを行い、切断が行われているかを確認する。比較群は1心筋細胞単独、2心筋細胞+βサブユニット、3心筋細胞+BACE阻害剤、4心筋細胞+βサブユニット+BACE阻害剤の4群で行う。十分量をトランスフェクションできる条件設定を行った。
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