レニン・アンジオテンシン系(RA系)は、循環器・腎臓疾患の発症や進展において重要な役割を果たしており、RA系の評価(生化学検査)は、これらの疾患の治療・診断に欠かせないものとなっている。最近、研究代表者の予備的検討により、尿中に循環器・腎臓疾患のバイオマーカーとなりうるRA系関連ペプチドの存在が確認された。そこで本研究は(1)尿中に存在するRA系関連ペプチドの精製・構造解析;(2)発見したペプチドの簡便な測定系の確立;(3)各疾患患者で新規ペプチドの特徴付け;(4)動物実験にて新規ペプチドの病態生理学的役割の解明;(5)関連疾患での臨床応用を目指すことを目的として行った。 目的(1)に関してヒトの尿中に存在する新規RA系関連ペプチドをゲル濾過法、イオン交換クロマトグラフィー、自作のアフィニティカラム、逆相高速液体クロマトグラフィーを用いて精製を行った。精製したペプチドは、質量分析装置を用いて一部の構造を決定し、本ペプチドが何らかの修飾を受けていることが判明した。現在、様々な酵素で部分的消化を行い、修飾部位の構造解析を行っている。目的(2)(3)に関しては、様々な腎疾患患者の尿と血液を採取し、本ペプチド濃度を予備的に測定して臨床パラメータと比較した。本ペプチドは尿蛋白や尿素窒素、血清クレアチニン、総コレステロールなどと相関が見られ、腎疾患・循環器疾患のバイオマーカーおよびメタボリックシンドロームの判定に有用である可能柱が示唆された。しかしながら、測定系は、解析できた一部の構造より確立したものであり、特異性が低いため、改良していく予定である。目的(4)に関しては、高血圧自然発症ラットに降圧剤を投与し、関連ペプチドと考えられるproang-12濃度が組織中で低下していたことから、組織RA系が独立して存在し、ヒト新規ペプチドが臓器障害と関連がある可能性が示唆された。
|