本研究の目的はkit ligand-2 (KL-2)を用いた心筋梗塞に対する遺伝子治療の機序を解明することである。我々はこれまでにマウス心筋梗塞モデルにおいて、KL-2を組み込んだレンチウイルスベクターを用いた、マウスの生命予後を改善することを報告したが、この機序に関しては不明である。また、本研究では、kit ligand (KL)の2種類のアイソフォームおよび2種類の変異体を作製し、治療効果の差についても検討する。 すでに作製した4種類のKLのアイソフォームを感染させた培養細胞の細胞溶解物を用いてWestern Blot法によりKLの発現および蛋白のサイズの確認を行った。感染細胞のフローサイトメトリーおよびELISAによる培養上清中KL濃度測定に関しては施行済みであるが再度確認を行い、膜型・可溶型KLを確認した。また、感染細胞より膜蛋白を分離し、分離した蛋白を用いてWestern Blot法によりKLの発現も確認することができた。4種類のアイソフォームに関する生理活性・骨髄遊走能試験に関してはTF-1細胞を用いてアイソフォームごとの増殖能を確認したが明確な差は現在のところ確認できていない。また、動物実験においては、マウス心筋梗塞モデルにおいて、内因性のKLの発現をKL-1、KL-2それぞれとKLのレセプターであるc-kitの心臓での発現を経時的に評価した。これにより、内因性のKL-2は心筋梗塞後に低下していた。この低下していたKL-2を補うことにより、KL-2レンチウイルスベクター治療が心筋梗塞モデルマウスの予後を改善させた可能性が示唆された。H23年度に心筋梗塞モデルマウスに対して遺伝子治療を行い評価予定であったがウイルス作成およびin vitroの実験が遅れたため完了できなかったため、今後継続して行う予定である。
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