研究概要 |
アデニル酸シクラーゼ(AC)のサブタイプのうち5型AC (AC5) は生命維持に重要な心臓、脳、腎臓に限局して発現している。本研究では近年報告されたEpac (exchange protein directly activated by cAMP) に着目し、AC5-Epac経路の心不全発症にはたす役割を解明し、本経路を標的にした創薬開発を目標にする。平成22-23年度の研究成果よりAC5-Epac経路は心不全発症を促進する経路であり新しい心不全治療の標的になりうることを明らかになり、同経路は不整脈発症に関しても重要な役割を果たしている可能性が示唆される。平成24年前半はAC5TG-Epac1KOマウスを用いて、AC5-Epac経路の不整脈発症にはたす役割を、経食道頻回刺激による心房細動マウスモデル(Circ Res 97, 62-69, 2005)を用いて検討した。平成24年度後半は、AC5特異的抑制作用を有することがin vitroで報告されている抗ヘルペス薬(Vidarabine:商品名アラセナA:J Biol Chem 279, 40938-40945, 2004)の心不全治療薬としての有用性についてin vivoで検討した。 [AC5TG-Epac1KOを用いた心房細動モデルによる検討] 経食道ペーシングで誘発される心房細動持続時間は、AC5TGマウスに比較して、AC5TG-Epac1KOマウスでは有意に短縮していた。以上の結果よりAC5-Epac経路が心房細動発症に重要な経路であることが示唆された。 [抗ヘルペス薬の心不全治療薬有用性の検討] 慢性カテコラミン刺激心不全マウスモデルを用いた検討で、Vidarabine投与群では非投与群に比べて心機能の低下は有意に抑制され、アポトーシスや生命予後も有意に改善していることが明らかになった。
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