ナトリウム利尿ペプチド系(NP)シグナルは高食塩負荷+アルドステロン(ALD)刺激により誘発されるミネラロコルチコイド受容体(MR)シグナルの活性化とどのように関連し、心保護的に機能するかを検討した。NP系のうちナトリウム利尿ペプチド(ANP)と脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の機能を障害するため、それらのリガンドの受容体であるグアニリルシクラーゼ受容体(GC-A)を欠損させたGCA KOマウスを用いて検討した。興味深いことにGC-A KOマウスは一定量のアルドステロンの存在下では食塩負荷に応じて心筋肥大や心筋線維化の心リモデリングが増悪した。その機序は血圧に非依存的であった。また、野生型(WT)マウスではそのような反応は認められなかった。この、GC-A KOマウスの食塩依存的心リモデリングの増悪は抗MR薬でキャンセルされた。すなわち、NP系シグナルが何らかの機序でMR系シグナルを抑制していることが示唆される状況である。しかし、GC-A KOマウスの高食塩+アルドステロン負荷マウスの心筋でMRそのものの発現や細胞内の局在はコントロールと比して差はなくどのようにNP系シグナルがMRの活性化を抑制しているかはいまだ不明のままである。ただし、今回の検討からはNP系が機能しない状況では食塩濃度に依然してMR系シグナルが活性化さえるという興味深い知見を得ることができた。また、そのMR系シグナルの下流で酸化ストレスマーカの亢進が認められた。抗酸化剤の投与で心リモデリングは改善をしめした。実際、酸化ストレスの産生に関与するNADPHオキシダーゼのコンポーネントの一つであるNox4の発現がGC-A KOマウスの高食塩+アルドステロン投与群で著名に増加しており、心筋細胞ではMR系シグナルが強く活性化される状況ではその下流でNox4が調節されて酸化ストレスの産生につながる可能性が示唆された。以上の結果をまとめ論文投稿中である。
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